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 column "peace wind"第17回

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C型肝炎に勝つ

伊藤忠出身 松丸 了   

まつり花の香り繞(めぐ)らす門出かな
 2005年5月24日、心療内科の医師が最後に質問した。
「死にたいですか」
「いいえ」とボクは即答した。
「あなたにはウツの要素はひとつもありません。どうぞインターフェロンの治療を受けて下さい」
 こうしてボクはすべての検査をパスして、C型肝炎ウイルスとの闘いを開始することになった。
 20年前、47才のとき、定期健康診断でC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。この結果、半年に一度の割合でエコー検査を受けてウイルスの活動状況をチェックしていくことになった。
 「ウイルスの活動は安定しています。また半年後に来て下さい」とエコー検査のあと先生がボクに告げた。
 こうした検査を何年にもわたり繰り返し受けて来たある日、検査のあと先生に提案した。
 「先生、インターフェロンでウイルスを一挙に除去したらどうでしょうか」
 「いや、C型肝炎ウイルスには色々なタイプがあってね。あなたの場合はインターフェロンで除去できない、やっかいなタイプのウイルスなんですよ」
 ショックであった。
 このままエコー検査をつづけている間に、ウイルスの活動が活発となって肝炎がひどくなり、肝硬変や肝ガンに進むような事態になった場合どうするのか、と不安を覚えたが、いずれにせよ現時点では打つ手がないわけだから、そのときはそのとき、と腹をすえることにした。
 「安定してますね」
 エコー検査の結果はいつも問題なし、であった。こうしたこともあって、6年前の2000年、定年退職したのをきっかけにエコー検査を止めてしまった。
 今年(2005年)66才の市の健康診断の結果、肝機能の数値が前年と比較して大きく跳ね上がっていることがわかった。ホームドクターの山本みどり先生に相談したら、「エコー検査を受けてみますか」ということになり、山本先生の紹介で自宅からさほど遠くない所にある東松戸病院の森田秀和先生のもとで肝臓の精密検査を受けることになった。
 4月(2005年)のはじめ検査結果が出た。
 「ウイルス性のC型肝炎ですね。C型には4つのタイプのウイルスがありますが、あなたのウイルスは一番やっかいなタイプです。それに量も多い」
 やっかいなタイプのウイルスということは20年前にも聞いており、何とも思わなかったが、量が多いといわれたのは初めてであった。一年ほど前から疲れ方が尋常でなくなった。ここ数ヶ月は特にひどく、身の置き場もないほどに疲れた。
 二十年間眠っていたウイルスがとうとう目を覚ましたか。ついに肝硬変、肝ガンへの道を歩み出したわけだ。ボクのウイルスにはインターフェロンは効き目がない。
 どうしようもないか、と沈んでいたボクの耳に森田先生の声が飛び込んできた。
「百パーセント成功するかどうかわかりませんが、あなたのタイプのウイルスに効果のあるインターフェロンがあります」
 「ボクの場合、インターフェロンは効果がないと言われましたが・・・・」
 「だれに?」
 「以前エコー検査を受けていた先生からです」
 「最近リバビリンとペグインターフェロンを併用した療法が開発され、あなたのウイルスにも適用が可能となった。ウイルスを完全に除去できるかどうかわかりませんが、いずれにせよ肝硬変への進行を遅らせる効果はあります。この療法は副作用を伴いますが、トライする価値はあると思います」と森田先生。
日本では百人の一人か二人の割合でC型肝炎の患者又はウイルスのキャリアがいる、と推測されており、C型肝炎は二十一世紀の日本の国民病とまで言われるようになった。
C型肝炎ウイルスにはいくつかのタイプがあるが、その中で日本人に一番多いタイプは「1b型」というタイプで、インターフェロンが効きにくいタイプである。
 この「1b型」ウイルスの排除を目的に開発された療法のひとつがペグイントロンとレベトールの併用療法である。
 「ウイルスが排除できれば人生が変わりますよ」と森田先生が言った。
 「人生が変わる」森田先生の言われる通りだと思った。
 何の手も打たず、いつ肝硬変になるか、肝ガンに進むかといたずらに心配することもなくなり、どうしようもない全身の倦怠感からも解放されれば確かに人生が変わる。
 打つ手は見つかった。あとはその手を打って局面の打開を計るしかないではないか。副作用など恐れることはない。
 ボクはウイルスとの全面戦争をする決意を固め、ペグイントロンとレベトールの併用療法を受けることになった。 

つづく

  

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