
~戦争が終わって5年たったころのお話~
長い夏休みが終わろうとしています。
モトムちゃんとツネちゃんはアカ拾いで貯めたお金で生ゴム紐を買いました。江野公園に生えている夾竹桃の二股になっているところを切って、パチンコを作るのです。
パチンコでスズメを撃とうということになりました。
二人の住む町から城北公園までは、二人の足でも30分かかりません。鬱蒼とした森は、小鳥たちの楽園でした。
二人は、パンツのポケットにパチンコの弾にする小石をいっぱい詰めて、公園に出かけました。森の中は、暗くて小鳥の鳴く声は聞こえますが、パチンコで狙えるところではありませんでした。 二人は、芝生のある広場の通りに並んでいるサクラの樹を見て回りました。スズメが何匹かいたのですが、モトムちゃんのパチンコのはずれ弾が、木の葉を突き抜けると、スズメは飛び去っていきました。
城北公園の大きな池の周りにあるサクラの樹に一匹のスズメをツネちゃんが見つけました。ツネちゃんがスズメを狙ってパチンコを打ちましたが、弾ははずれ、大きな音をたてました。でも、不思議なことにスズメは逃げようとはしませんでした。
モトムちゃんの打った弾は、見事に命中しました。スズメは少し毛を撒き散らすと、隣の樹に移りました。
今度は、ツネちゃんの弾が命中したように思えました。スズメは飛んで、逃げようとしましたが、途中で力が尽きたのか、芝生の上に落ちました。
モトムちゃんとツネちゃんは歓声をあげて、スズメの落ちたところに駆け寄りました。
モトムちゃんは、スズメを手に持ちました。スズメの両足が震え、目が今にも閉じそうになっていました。
「ウェ-ン!」
スズメの最後に立ち合ったモトムちゃんは、大声で泣き始めました。
二人は死んで固くなったスズメを持って家に帰りました。ツネちゃんのお母さんが言いました。
「まだ、生まれて間もないスズメじゃないか。」
お母さんは、熱湯の中にスズメを入れると、そのあと、羽と毛をむしりとり七輪でスズメを焼いてくれました。
砂糖醤油で焼かれたスズメはますます小さくなっていました。
お母さんがそれを文化包丁で二つに切って、子供に差し出しました。
二人の子供はうれしそうにそれを食べましたが、目にはいっぱい涙を溜めていました。