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 column "peace wind"第28回

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「イーストウッドは私のアイドルだった」

ダイヤのお竜(三菱商事出身)  

 クリント・イーストウッドの監督・主演作品「グラン・トリノ」を観た。
 テレビ映画「ローハイド」のロデイ役・イーストウッドは、プレスリーやトロイ・ドナヒューと並んで中学・高校時代の私のアメリカ人のアイドルだった。(日本人では松島アキラ。真面目な高校生だったけれど、彼の出演する新宿や銀座、渋谷のジャズ喫茶を随分荒らした。私の青春! でもこれを読んでくださっているみなさん、ご存知でしょうか?)
 その「ロデイ」がマカロニ・ウエスタンの主演者となり、さらにダーテイ・ハリーなる暴力的な警官役で爆発的な人気を得たことは知っていた。
 しかし、どれも時間を割いて映画館にいくべき映画と思えず、時は過ぎた。
 再会はアカデミー作品賞をとった映画「許されざる者」だ。
 引退したカウ・ボーイが止むに止まれず悪を退治する「最後の西部劇」にふさわしい秀作で、小気味よさと寂しさの入り混じった素敵な作品だった。
 「ミリオンダラー・ベイビー」「ミステイック・リバー」にも感動したし、「硫黄島からの手紙」での日本人への視線の優しさにも驚いた。女たらしでちょっぴり軽薄なロデイはもうどこにもいない。彼はいまや堂々たる大監督である。
 さて、「クラン・トリノ」。
 偏屈な人種差別者のウオルト(イーストウッド)の隣にアジア人種・モン族のファミリーが越してくる。はじめは頑なだったウオルトも、素朴であたたかな隣人に次第に心を開いていく。アジア人姉弟には不良グループのリーダーである従兄弟がいる。不良グループから姉弟を守ろうとウオルトは不良たちに制裁を加える。それが仇となり、姉はレイプされてしまう。そこでウオルトがとった行動とは・・・。
 「結末は絶対に話さない。」のが礼儀だろう、とても感動的だった、とだけいいたい。
 ウオルトは朝鮮戦争に兵士として参戦していて、そこで何人もの朝鮮人を殺した体験がトラウマになっている、という隠された設定がこの映画の重要なポイントだ。
 イーストウッド自身は出征していないが、1930年生まれだから朝鮮戦争のとき20歳。主人公ウオルトと彼は同年で、ウオルトはイーストウッド世代そのものなのだ。
 ラストに感動するのは、アメリカがアジアで、世界で今も繰り返している戦争をリアルタイムで体験してきた者としてのイーストウッドの強い抗議が込められているからだ。
 イーストウッドに伝えたい、「大好きです。ロデイの頃より」と。そんなことを思ってしまう映画だった。
 そういえば、彼の作品には「女性への優しさと尊敬」があふれていると思うのだがどうだろうか。「許されざる者」でも女性(娼婦)をきちんと人間と認め、彼女たちへの暴力、屈辱的な扱いに対する報復がテーマのひとつになっていた。
 「男は女を守るもの」というのは古いとわかってはいるし逆も真なりだが、しかし、イーストウッドの姿をみていると、そういうのもカッコーイイナーと思ってしまう私がいる。

 

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