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   講演:九条を変える前にかんがえなければならないこと

目  次

九条を変える前に考えなければならないこと
第1節   護憲的改憲派から護憲派に変わる
第2節   ルワンダの大虐殺事件の教訓
大虐殺を阻止できなかった二つの理由
「保護する責任」Responsibility to Protect
人類はまだ「保護する責任」を使いこなすまで成熟していない
第3節   シエラレオネでの原体験
映画「ブラッド・ダイヤモンド」が語るシエラレオネ内戦
シエラレオネとアメリカの深い関係
国際NGO現地事務局長としての最初の2年半
内戦の勃発と大虐殺に遭遇して
国連PKO政務官として、再び現地へ
ゲリラの武装解除、内戦終結に成功
第4節   人間が大量に殺されるのを防ぐために必要な武力介入はある
第5節   戦争犯罪を許したロメ合意はぎりぎりの選択
第6節   アフガニスタン問題の本質
ODA予算100億円を使った対米軍事協力
軍閥の武装解除でタリバンが戻ってきた
NATOの軍事作戦への参加は集団的自衛権の一環
メディアによる過剰な悪者イメージの刷り込み
タリバンとの妥協を模索するカルザイ大統領
テロリストとの政治和解、「正義か平和か」
第7節   予防する責任Responsibility to Preventと日本の潜在能力
第8節   日本に対するアフガン人の「美しい誤解」
第9節   九条を世界平和に役立てることが肝心
質疑応答
Q1
Q2
Q3



九条を変える前に

考えなければならないこと

  「商社九条の会・東京」第7回講演会
  講師;伊勢﨑賢治氏
  講演会開催日;2008年8月16日(土)
  開催場所;月島社会教育会館ホール

 (以下の講演録は当日収録した録音テープ及びビデオテープを基に、事務局の責任に
おいて文章化・編集したものです。また中見出しも事務局がつけたものです。)

第1節 護憲的改憲派から護憲派に変わる

どうも、今から1時間ばかり話します。今日の題名は「九条を変える前に考えなければならないこと」となっています。
ぼくの政治的な立場は、つい最近までは護憲的改憲派って言うんですか、そんな部類の立場でしたが、今は護憲の立場をとっています。日本社会では、「テロ特措法」が一番いい例なんですけれども、いわゆる違憲行為が大手を振っていて、国家の最高法規である憲法に対するrespect 尊敬がないですよね。現実と憲法がいう理想の間に隔たりがあるので、とにかくそのギャップを埋めなくてはならないかなと、国際協力をやっている現場の日本人には、こういう意見が結構多いんです。これは別に思想的にタカ派というわけではなくて、国際秩序とか国際平和のために現場で働いている人間にはこういう現実的な改憲派がけっこう多いんです。ぼくもその一人でした。
今日の後半でお話しする、日本政府の代表として、ブッシュさんが始めた二つの間違った戦争の一つ、アフガン戦に関わるようになって、これを契機にして、そしてアフガンでイラク戦が始まるのを見て、考え方がガラッと変わりました。今は国益のために、憲法、特に九条と前文は絶対に護るべきだという立場をとっております。その考え方に沿って今日のお話をしたいと思います。

第2節 ルワンダの大虐殺事件の教訓

前半の30分ぐらいは、アフガンとはあまり関係のない、特に日本人とはあまり関係ないように見えるアフリカの話を致します。
いま画面にチラッと見えておりますが、これから始めます。5分ぐらいのビデオでありますが、ぼくはルワンダに行ったことはないんですけれども、ルワンダのビデオです。
1994年ルワンダで悲惨な事件が起こりました。映画『ホテル・ルワンダ』(2004年製作)の舞台となった事件です。フツ族とツチ族の民族的な争いなんですけれども、何と100日間で80万人が虐殺されるというジェノサイドが起こったんです。その現場には完全武装した、中立の立場で調停をする目的で送られていた国連平和維持軍がいたんです。それが、何にもできなかった。フツ族とツチ族のその争いを止められなかったんです。その国連平和維持軍の最高司令官は、カナダ人のロメオ・ダレール、当時のランクは、旧日本陸軍の言い方をすると少将、一応将軍です。
彼とぼくがNHKの番組で対談したんですね。それが一時間ぐらいのドキュメンタリーになって、丁度一年ぐらい前に「未来への提言」という名前で放映されました。その抜粋をお見せ致します。なぜぼくがそのロメオ・ダレールさんと対談したかと言いますと、後でお見せしますが、僕もアフリカでひとつの大きな原体験、50万人が殺されたシエラレオネ内戦を経験しているのですね。同じような原体験を持つ二人が対談する形になった訳です。
先ず、ルワンダのビデオです。1994年です。フツ族とツチ族は歴史的に対立していたんですけれど、この虐殺は多数派のフツ族の、少数派のツチ族に対する一方的な虐殺です。歴史的な怨念があったんですね。
ロメオ・ダレール氏これが当時のロメオ・ダレール将軍です。国連PKOの最高司令官であります。彼が被っているのはいわゆるブルーヘルメットですね、国連平和維持軍の象徴であります。中立な軍であります。100日間で80万人というとちょっと想像がつきませんが、一日に換算しますと、8千人殺されたことになります。これは核兵器並みの、核兵器以上の破壊力です。人間はこんなに効率よく殺せません。どうやって殺したのか、それは後で出てきます。
ロメオ・ダレール氏これが現在の彼、ロメオ・ダレール上院議員です。彼は退役後、カナダ政府の上院議員をやっております。これが対談の場です。
ルワンダは大変小さな国で、人口数百万人であります。アフリカの中部にあります。これはフツ族側の民兵です。一般市民ですが、動員されて虐殺を働くんです。大量破壊兵器は何も使われておりません。使われているのは全て、中国から大量に輸入されたと言われていますけれど、もimg、刀とかナイフです。若者たちを中心に動員されていきます。その動員に使われたのがフツ族側の政治団体が経営する地元のFMラジオだと言われております。ツチ族はゴキブリだと、過去の闘争の歴史が喧伝され、憎悪が掻き立てられていくわけですね。民衆がメディアによって見事に動員されていく訳であります。で、殺戮が起ります。
(映像の)上に見えているのは国連の装甲車です。小規模ではありますけども、8百人ぐらいの完全武装の国連平和維持軍がいたんですね。歴史的に闘争を繰り返していましたので、それを調停する目的で国連軍がいた訳であります。
現場の最高指揮官のロメオ・ダレール将軍は、ちゃんと訓練された軍人ですから、大変なことが起こりそうな予兆、大規模な紛争には必ず予兆がありますんで、それを敏感に察知します。そして国連の本部に打診を致します。どういう打診かというと、「いま大変なことが起こりつつある。軍事訓練が公然と行われていて、若者がどんどん動員されつつある。武器も集積されつつある。武器の集積場所とか、軍事訓練が行われている場所、われわれはそれらを全部情報として把握している。それを制圧するため、非常にマイルドな軍事行使、~マイルドなですよ、戦争じゃありません、いわゆる警察機能みたいなもんですね~をさせて欲しい」という風な打診をした訳であります。
国連本部の当時のPKO局長は後に事務総長になるコフィ・アナンさんですけれども、コフィ・アナンさんを通じて安全保障理事会にOKを出してくれるように掛け合った訳であります。けれども、国連安全保障理事会はNO=黙って見ておれ、という風に指令を出した訳であります。それで、この世紀の大虐殺が国連平和維持軍の見ている前で起こってしまう訳であります。この後、ロメオ・ダレール将軍は辞任します。国に帰って、軍人として当然だと思うんですけれども、何もできなかったという自責の念からPTSDに罹ります。そして自殺未遂を致します。一命を取り留め、リハビリを重ねて、その後上院議員になりました、カナダでは上院議員というのは指名制らしいんですけどもね。
今は、「保護する責任」(Responsibility to Protect)という概念をカナダ政府と共に世界に向けて発信しております。誰が誰を保護する責任かと申しますと、国際社会がこういった大虐殺が起こるような人道的危機に瀕する民衆を保護する責任、ということであります。

大虐殺を阻止できなかった二つの理由

このルワンダの大虐殺は、国連にとって、国際社会にとって、大変に大きな教訓になっております。教訓というのは、なぜ中立の国連平和維持軍が現場にいながら、民衆が民衆を殺すという殺戮を止められなかったか、ということであります。
その理由は二つあります。一つは、これは建前的なものですけれども、いわゆる国連の基本理念である「内政不干渉の原則」であります。国連というのは主権国家の集まりでありますから、国連憲章でも、主権は侵害しないと明確にしています。「内政不干渉」は国連の基本理念であります。
この場合は、現場に中立の立場で、調停するために国連軍がいたんですけれども、この虐殺はフツ族が一方的にツチ族に対して行った虐殺でありますから、それを取り締まるというのはフツ族を取り締まる訳であります。フツ族に対する軍事行使に当たる訳です。別に戦争を仕掛けるという訳じゃなくて、とにかく民衆の不穏な動きがあるところ、そういう危険な場所を警察機能の一環で、そこを使えないようすると言うような行動でありますけれども、これだけで立派な武力行使になる訳ですね。中立的な立場の国連としてはそれはできない。一主権国家内の一つの政治勢力に対して、そういった偏った介入はできない。これが一応建前的な障害となりました。
もう一つは、アメリカ合衆国という存在であります。当時ブッシュさんの前のクリントン政権でありました。丁度このルワンダの大虐殺が起こる数ヶ月前に、このルワンダからあまり離れていないソマリアという国である事件が起こります。
ソマリアの位置この頃アフリカもののハリウッド映画が多いんですけれども、その事件は、『ブラックホーク・ダウン』というハリウッド映画になっております。時間があったら観て下さい。
どういう事件かと言うと、当時のソマリアは、今もそうなんですけれども、ずっと内戦状態でした。複数の軍閥が闘争をしていた訳であります。当時、平和維持のために国連が承認していた多国籍軍がそのソマリアにいて、その中にアメリカの部隊がいたんです。アメリカの部隊は多国籍軍でありながら、ある日、一つの特殊な秘密行動、軍事作戦を敢行致します。それは抗争を繰り返していた軍閥の、最大軍閥の一人を捕獲若しくは殺害するという秘密工作であります。ある日、この時間、この辺りにその軍閥がくるらしいという情報をアメリカ軍は得ます。そしてそれを捕獲するために、アメリカ軍の基地からブラックホークという戦闘ヘリが二機飛び立ちます。中に特殊工作員、兵士を積んだ武装のヘリですね。
ヘリコプターが町の上空に差し掛かったところ、地上から攻撃を受けるんですね。そして、墜落致します。ヘリコプターの中には未だ生存者がいました。米兵です。町の中に墜落したもんですから、民衆がそれを見て取り囲みます。そして、反米感情の一環からでしょうか、その民衆がヘリの中から米兵を引き摺り出して殴り殺しにする訳であります。本当に殴り殺しにであります。それだけで終わればよかったんですけれど、それが全部ビデオに録られてしまった。そのビデオがメディアの手に渡り、アメリカ国内で全部放映されちゃった訳であります。つまりアメリカ軍の若い兵士の死体が弄ばれて、それが群集によって町中引き摺られていくあの衝撃的な写真です。
それを観たアメリカ国民は当然衝撃を受けます。同じことが起こったら、例えば自衛隊員がそんな目に遭ったら、日本国民も多分同じような反応をするだろうと思うんですね。その時の反応は、たかがアフリカの平和のために、若い米兵の尊い命、血がなぜ流されなければならないのか、という当然の反応であります。
そして、ブッシュ政権になってからこれは変わってしまったので隔世の感がありますけれども、当時のアメリカでは、国際秩序の維持のために米兵がリスクを冒すことに対する世論が大変にしぼんでいった訳であります。それを敏感に察知したクリントン政権は、安全保障理事国の一番強大な国の一つとして、現場からの、ロメオ・ダレールさんからのリクエストに対して、NOと言い続けた訳であります。これが二つ目の理由であります。アメリカの影響であります。

「保護する責任」Responsibility to Protect

自責の念から自殺未遂までしたロメオ・ダレール上院議員が発信している、保護する責任(Responsibility to Protect)という概念、英語の頭文字をとって「R2P」と要約していますが、これは一応国連のサミットでも承認された考え方です。今かなり世界に向けて説得力のある考え方になっております。この保護する責任が意味することは、端的に申しますと「脱主権国家論」であります。ルワンダのようないわゆる破綻国家、Failed Stateと言うんですけれども、あんまりよろしくない、しっかりしていない政権に牛耳られている国、ちょっと可哀想な国ですね。そういう国で大虐殺のように大量の人間が死ぬ、人道的危機が起こる。主権というのは本当は責任です。国民を護らなければいけない責任がある訳ですね。しかし国家がこの責任を放棄しているような状態、だからFailed Stateって言うんですけれども、そればかりではなくて、それに加担しているような場合、「内政不干渉の原則」を凌駕してでも、その問題に介入する責任がある、というのがこの考え方です。そういう意味で「脱主権国家論」になる訳であります。これは大変に説得力を持って今語られている訳であります。
それはなぜかと言うと、今、ルワンダのケースは終わってしまいましたけれども、同じようなケースが未だ現在進行形であるからであります。それが今さかんに語られているダルフール問題のスーダンであり、それとミャンマーの、ビルマと言ったらいいんですか、軍事政権の問題であります。それともう一つが北朝鮮。この三つのケースが「保護する責任」で、つまり国家主権によって、その強権的な政権が国内でやっている非人道的行為に対して介入すべきか、せざるべきかと言う瀬戸際の話ですね。
現在進行形のこの三つのケースに、別にぼくは中国を批判するつもりはありませんが、残念ながら、その全てに中国が深く関わっているんですね。
ダルフール問題に関しては、スピルバーグ監督が中国に抗議する意味で、つまり中国が、強権政権であるスーダン政権をバックアップして、軍事供与もしている結果、ダルフール問題が起こっている訳でありますけれども、彼はそれに抗議して北京オリンピックの芸術顧問を辞任したんでしょ。あれはパフォーマンスだとぼくは思うんですけれども。中国がスーダン政権にこれだけ関わるようになったのは、歴史的に見ると、そもそもアメリカの所為なんですね。ぼくは中国好きなんですけれども、現状を見ますと確かに中国政府は人道的観点から、ぼくでもちょっと弁護できないようなことをやっているのは事実であります。これはミャンマーの軍事政権でも同じことであります。そこは大変残念なのですけれども、こういうコンテクスト(文脈)でこの「保護する責任」というのが語られている訳であります。

人類はまだ「保護する責任」を使いこなすまで成熟していない

とにかくルワンダで、100日間で80万人が殺された、この現実を見てしまうとこれは凄く決定的です。主権は大切です。国家主権は大切です。けれども、「保護する責任」というのは凄く説得力があるんですよね。でも、このビデオの対談の中では、ぼくはロメオ・ダレールさんに対して異論を、対談ですからいろいろな意見を言い合うんですけれども、「ぼくは、半分これは理解できるし、サポートする。けれども、後の半分は未だ懐疑的である」って言うような意見を表明しております。それはどういうことかというと、ロメオ・ダレールさんは大変尊敬すべき軍人でありますけれども、彼はぼくが経験したものを経験しておりません。それは何かと言うと、ぼくはブッシュさんが始めた二つの間違った戦争の一方のアフガン戦争を知っている訳であります。どういうことかと言うと、イラクに侵攻する時も、アフガンに侵攻する時も、ブッシュ政権はこれと極めて似かよった理屈でもって戦争を始めた訳であります。「人道主義」、「民主化」、それとか「圧政から民衆を解放する」、「悪政を倒す」と言うような文句でもってブッシュさんは自らが行いたい戦争を正当化致しました。つまり、「保護する責任」というのは大変説得力のある考え方なんですけれども、これを誰が言い、誰が行使するかによって、戦争を始める理由になりかねない訳であります。
で、これをちゃんと使いこなすまで未だ人類は成熟していないと言うのが、ぼくの残念ながら今のところの意見であります。これは、もう一つの原体験であるぼくのアフガニスタンの原体験から、こう言わざるを得ないということであります。

第3節 シエラレオネでの原体験

でも、この「保護する責任」(R2P)と言うのは、さっきも言いましたようにぼくは、100%じゃないですけれども、半分以上サポートしたい概念であります、特に日本人として。
ぼくがなぜこれをサポートしたいのかというと、さっきも言いましたように、ぼくにはもう一つの、本当の最初の原体験となったアフリカでの苦い経験があります。それがシエラレオネです。

映画「ブラッド・ダイヤモンド」が語るシエラレオネ内戦

映画の話ばかりしますけれども、去年封切られた映画「ブラッド・ダイヤモンド」です。この舞台となったのがシエラレオネ、西アフリカの小さな国であります。レオナルド・デカプリオが熱演しております。アカデミー賞の候補にもなりました。大変いい映画です。先ずダイヤモンドが舞台なんです。シエラレオネというのはダイヤモンドが採れる国です、それも簡単に採れるんです。ダイヤモンドの原石ってこんなにちっちゃいですから、密輸できるんですね。それで国際的なマフィア・シンジケートが絡む訳であります。そこに武器商人とか武装勢力とかが絡む世界です。
この映画にも描かれておりますけれども、キンバリー・プロセスってご存知ですか皆さん。Blood Diamond、つまり血塗られたダイヤモンド、これは別名Conflict Diamondとも言われます。つまり紛争ダイヤモンドであります。
ダイヤというのは加工されてしまえば何処で採れたかなんて判らないでしょう。多分女性の方はダイヤを持っていると思うんですけれども、皆さんの中に10人ダイヤモンドの保持者がいるとしたら、その2割ぐらいは多分シエラレオネからきたんだろうと思うんです。でもそれがシエラレオネ産であることなんか判りますか、判らないと思うんです。つまりダイヤを取引すること自体、ダイヤを買うこと自体が内戦に油を注いでいることになっているという反省から、このブラッド・ダイヤモンド、この紛争ダイヤモンドという言葉が生まれてきている訳であります。
キンバリー・プロセスというのは、ダイヤモンド取引業者の自主規制から始まったもので、これは国際条約ではありません。どういう自主規制かと言うと、素性の判らない、つまり原産地の判らないダイヤは取引しないということであります。原産地が判らないダイヤモンドは、ほとんど100%密輸されたものです。つまり、アフリカから原石のまま、アントワープとか、イスラエルとか、インドとかに渡っちゃえば、それが何処で採れたか、もう判らないんです。ダイヤはダイヤですからね。だから素性の判らないダイヤモンドがあったとしたら、それはほとんど100%密輸されたものです。密輸されたということは、こういう状況で密輸されたっていうことであります。だからそれを取引するということは、間接的に、ぼくは直接的だと思いますけれども、紛争を煽っていることなんです。なぜかって言うと、ダイヤモンドを現地で密輸しているのは、ほとんどが武装勢力であります。彼らはその密輸したお金でもって武器を買い、人を殺す訳であります。そういうことでキンバリー・プロセスが2000年に始まりました。もちろん日本は未だ批准してない、だから素性の判らないダイヤモンドが未だに取引されていると思うんです。こういう背景が全てこのハリウッド映画に描かれております。

シエラレオネとアメリカの深い関係

シエラレオネの位置シエラレオネは、此処です。ほんの小さな国です。首都はフリータウンと言います。この首都の名前の由来は非常に新しいです。フリータウンですから、なんかアフリカの言語ではありませんよね。英語であります。この町の由来は、アメリカで奴隷が解放された時に、連れて行かれてからもう数世代も経っている訳でありますけれども、その一部の黒人たちをアフリカ大陸に帰そうじゃないかという動きがあって、そこで最初に流れ着いたところが此処だという訳であります。それに因んでフリータウンという名前が付けられている。
これはどういうことかと言うと、アメリカにとって大変に歴史的に関係の深い国だということであります。特にオバマさんを支援するようなアフリカ系アメリカ人、特にキリスト教系の人たちですね。この解放奴隷たちが母体となってこのシエラレオネ、若しくはその隣のリベリアが建国されます。リベリアの国旗は星条旗であります。そのくらいリベリアとシエラレオネっていうのはアメリカ合衆国にとって歴史的、文化的に若しくは宗教的に非常に繋がりがある国なんです。アメリカ国民にとっては放っておけない国なんです。先ずこの点をご承知おき下さい。

国際NGO現地事務局長としての最初の2年半

ぼくがこの国と関わるのは、1988年です。ぼくは未だ20代です。25~6歳の時ですね。大学院を終えたときに、どういう訳か当時はアメリカに本部があった「プラン・インターナショナル」という大変大きな国際NGOに入りました。皆さん、NGOというと日本のNGOを思い浮かべ、ボランティア団体だと思うでしょうが、欧米のNGOっていうのは違います。国連(ユニセフ)よりデカイですから。ぼくたちは商社並みの給料を戴いていたかも、大変給料がいいんです。ぼくは例外的に若かったんですけれども、ぼくの同僚というのは皆四十過ぎで、もうほとんどが多国籍企業の海外支店長とかの役職を経験した人たちが現場の責任者として行く訳ですね。大変に福利厚生がしっかりしておりますから、家族を全部連れてそこに移住できる、教育費も全部持ってくれるような、ちゃんとした団体なんですね。これがいわゆる大手の欧米のNGOなんです。団体の「年収」も大きく、ぼくが所属してたプラン・インターナショナルの「年収」は700億円でしたかね、それくらい大きな団体です。因みに国連のユニセフなんて300億とか、400億円くらいなんですね。だから国際NGOっていうのは国連よりデカイんです。その現地事務局長としてぼくはこの国に赴任しました。
赴任したシエラレオネでは、ぼくの団体がこの国で一番大きな国際援助組織でした。国連のユニセフよりも、どの二国間援助の団体よりもデカかった。もちろんJICAよりもデカかった。もっとも、ここには日本大使館もJICAオフィスもありませんでしたが。でもイギリスとかフランスとかの二国間援助の団体よりも我々は大きかったんです。この国最大の国際援助組織です。この国の半分の人口をぼくらはカバーしてました。この国の小学校の8割はぼくが作りました。この国のたしか7割の診療所、病院はぼくが作りました。一つの民間団体でありながらNGOが国の半分を運営するような形です。政府ができないことを我々がやるということであります。
何でこんなことをNGOがやらなくてはいけないかというと、政府が何にもやってくれないからであります。じゃ、何でダイヤが採れるのに、政府が何にもできないんだと言っても、それができないんです。シエラレオネはその当時から世界の最貧国です。世界で最も貧しい国がシエラレオネでした。でも美しいダイヤモンドが採れます。ダイヤモンドのほか、ルータイルも採れます、これはチタンの原料ですね。これがざくざく採れるんです。金も採れます。
これがあるのになぜ国庫を潤さないかって言うと、汚職です。一党独裁ですね。マネージメントが大変に悪い。皆さん方の中には外国で働いた経験がある方は一杯いらっしゃると思うんですけれども、ぼくがシエラレオネで経験した汚職像というのは、本当に言葉で言い尽くせない、右から左、上から下まで全部汚職です。つまり賄賂がないと何も通らないということですね。どういうことかというと、宝石の仲買人・取引業者とか、多国籍企業とかが、政府の中の高官若しくは政治家に賄賂を払うことによって、そういった天然資源が収奪されていくっていう構造です。汚職であります。
そういった訳で、一NGOでありながら、一民間団体でありながら、ぼくはこの国で最大の国際援助、開発援助をやっていた訳であります。当時、この国の大統領、モンモさんという元軍人でしたけれども、僕はこのモンモ大統領とは非常に仲が良くて、彼の推薦で議員を一期務めました。これは議員の時の写真であります。お分かりになるかと思うんですが、ぼくはこれです。今のほうが若く見える、と言われるんですが、これが26歳の時のぼくであります。
(写真を見せて)その当時ぼくがやったことはこれ、子供に焦点を当てた開発事業です。幼児の死亡率が世界最高の国です。とにかく子供がバタバタ死ぬんです。それを生存させる。母子の健康とか福祉というのは、お母さんの仕事であります。親父に小金を掴ませると、これはタバコ銭とかお酒代とか、ここは一夫多妻制がある国ですから、次の女性をつくったりしてしまう訳ですね。だからお母さんたちを中心に開発事業を行うと、直接的にその恩恵が子供に行くことになります。我々の活動の目的は子供を生存させるということなので、その為には病院も造りますし、ワクチンも打ちます。給食事業もやりますし、学校も作ります。家庭全体が裕福になるように農業プロジェクトもやります。水に困っていれば井戸も掘ります。全てやった訳であります。その焦点は全て子供であります。

内戦の勃発と大虐殺に遭遇して

ところがぼくが赴任してから丁度2年目のあたりに、隣のリベリアでクーデターが起こって、チャールズ・テーラーが政権を握ります。当時、カダフィさんがアフリカにイスラム革命を画策して、アフリカ中の反政府指導者たちをリビアに集めて訓練していたんですが、チャールズ・テーラーもそこにいたんですけれども、そこでシエラレオネ人のフォディ・サンコーという人物と知り合います。リベリアでクーデターに成功したチャールズ・テーラーは、その旧友のフォディ・サンコーを通じて、同じようなことを隣国シエラレオネでやろうとします。そこからシエラレオネの内戦が始まる訳であります。これが1990年、丁度ぼくが赴任してから2年目のことであります。反政府ゲリラとしてフォディ・サンコーは蜂起した訳でありますけれども、その時彼らが掲げていたのは「革命」です。
この反政府ゲリラの名前は通称「RUF」と言います。Revolutionary United Front、日本語に訳しますと「革命統一戦線」です。革命なんです。つまり「一党独裁を打破する。なんでダイヤが採れるのに世界最貧国なのか、国が悪いからだ、社会が悪いからだ。それをぶっ壊す」という革命であります。それを前に立てて革命を起しました。彼らが一番欲しかったのは、ダイヤモンドの利権であることは間違いない訳ですけども、少なくとも蜂起した時の理由、政治的な理由は「革命」、政治革命であります。
この革命が起こった時に、彼らが蜂起した時に、何とこの国のインテリゲンチャーや、この国の行政にいつも苦い思いをさせられてきた国際援助団体の主だった外国人は、ぼくも含めてですが、手を叩きました。革命が起きて当然である、ということであります。悪政が続けば、革命は起きます、当然のことであります。ぼくは革命に期待しました。手を叩きました。でもその時には、この革命、内戦がこの後10年も続き、50万人も殺すとは夢にも思わなかった訳であります。事実はそうなってしまった訳であります。この後この内戦は10年間続きます。その中で本当は解放するはずの民衆が50万人も殺される訳であります。
(写真をみせて)これは当時ぼくらが給食活動をやっていた子供たちであります。これは反政府ゲリラが村を襲うところです。ゲリラ戦ってのはこういうことなんですね。別に宣戦布告してガーっとやってくる訳ではなくて、村を一つ一つこう侵攻してくる訳であります。これがゲリラであります。みんな若いんですね。革命思想を持ったゲリラであります。
遂に首都フリータウンまで彼らは進攻致します。そして大虐殺が行われます。
勿論ぼくはその後2年間、内戦中を含めて都合4年半家族と一緒にこの国で頑張るんですけども、どんどんどんどん国際組織は出て行って、ぼくは一番後になった訳であります。危険を察していながら、なぜ直ぐ出て行かないのかと思われるかも知れませんけれども、そんなことはできないんです。なぜかと言うと、ぼくの活動というのは半端な活動じゃありません。この国の半分を動かす活動です。政府が何もしてくれない。すると住民の最後の望みというのは、ぼくの活動な訳であります。ぼくが出て行ってしまったら、彼らは大量に難民化します。大量に国を出て行きます。するとどういうことになるかということであります。大量に難民を出すか、ぼく自身が撤退するかという選択であります。そこで、ぐずぐずと4年半おったという訳であります。大変危険な目に遭いました。この反政府ゲリラによって自分のスタッフを二人殺されました。
内戦の終り頃には、この反政府ゲリラはとんでもないことをし始めました。それがこの写真であります。子供たちを中心にした兵士が、住民の手足を生きたまま切るということであります。ここに来て初めて国際社会は驚く訳であります。アフリカで50万人殺されたぐらいでは、国際社会は驚きません。アフリカ人の命は非常に軽い訳であります。50万人殺されただけでは駄目なんです。殺す以上のこういうことをして、初めて警鐘が鳴る訳ですね。

国連PKO政務官として、再び現地へ

国連安全保障理事会は重い腰を上げます。国連PKOを此処に派遣する決定を致します。勿論、その時にはぼくはもう国外に出ていましたから、今度は国連の幹部の一人として、この国に9年ぶりに戻ることになります。もちろん国連PKO活動ですから家族は連れていません、単身赴任であります。
(写真を見せて)シエラレオネ内戦をもう一つ有名にしたのが子供の兵士です。チャイルド・ソルジャーであります。繰り返しますけれども、これは革命なんです。世の中をぶっ壊す、体制をぶっ壊す革命であります。こういうメッセージは若い子供たちに受けます。今のニートとか職を持たない若い者たちが戦争を待ち望んでいるみたいなことが日本でも報道されましたよね。あれは多分世界共通の現象だと思います。若者、特に何も定職を持たない若者というのは、戦争を心待ちにします。「とにかく世の中がいけないんだ、自分がこんな目に遭っているのは世の中がいけないんだ。ぶっ壊して遣ろうじゃないか」、こういった思想、RUFの思想は若者をどんどん惹きつけました。そしてこのRUFの反政府ゲリラ活動に若者がどんどんどんどん入っていきました。子供の兵士もその一つであります。一つのファッションです。殺してやろうじゃないか、ぶっ壊してやろうじゃないか。これは子供でも、そういうのに乗せられちゃう訳でありますね。一つのファッション性であります。これは『ブラッド・ダイヤモンド』という映画に非常によく描かれております。彼らが村々を襲う時っていうのは、ラップ・ミュージックをかけて、このような服装、つまり軍服は着ておりません。どちらかと言うとアメリカのニューヨークのダウンタウンのギャングです。ファッションなんですね。ファッションと音楽でもって、その頽廃的なセクシーさ、暴力のセクシーさをこう前に出していく。それでこの反政府ゲリラ、反政府活動っていうのがどんどん大きくなっていく訳です。その過程で子供たちが動員されていくという訳です。
ぼくはこの内戦を収めるために、この国に舞い戻る訳でありますけれども、その過程でこの戦争被害者若しくはその加害者、両方から証言を至る所で聞くことになります。大変おぞましい殺し方を彼らはしました、特に子供たちは。子供というのは一旦殺すきっかけをつけてあげると、本当に見境なく殺します。成人の兵士よりも残虐な殺し方をします。子供というのは本当に見境なく殺し続けます。何らためらいもなく、人を殺します。そういう意味で子供の兵士というのは最終兵器です。これが一番恐ろしいリーサル・ウェポン(Lethal Weapon)であることは間違いない。その意味で子どもの兵士は核兵器よりも恐ろしいかもしれない。
ですから今、子供をリクルートし、兵士として使うということは明確な戦争犯罪として、日本が昨年批准したICC(国際刑事裁判所)では規定しております。子供の兵士を使うことは戦争犯罪であります、一番重い戦争犯罪の一つであります。それは、ぼくは実感として非常によく分かります。子供は最終兵器です。さっきも言いましたように、国連は住民の手足が切られるようになってから、内戦9年目辺りから、シエラレオネに興味を示し出して、国連平和維持活動PKO、そのシンボルであるブルーヘルメット、これを派遣することにします。国連平和維持活動というのは、これは全て現場では文民統制が原則であります。兵士が何万人と行く訳でありますけれども、それを文民統括するのは我々政務官ですね。ぼくは、その政務官の幹部として、武装解除をするための責任部署の最高責任者として、この国に赴任することになります。

ゲリラの武装解除、内戦終結に成功

当時はこの国の半分以上が反政府ゲリラによって制覇されていました。ぼくらはその反政府ゲリラが制覇しているところに出掛けて行って、現場の指揮官たちと一人ひとりアポを取り、アポをとるのも大変な訳でありますけれども、その後、直接交渉へ出掛ける訳です。その時、我々は非武装で行きます。非武装の我々と話すんだからお前もちょっと武装を解いてくれという形で、裸同士で話し合う訳であります。その話し合いというのは、別に平和の価値を説く訳ではありません。そんなことで彼らの心は動きません。彼らの心を動かすのは、いわゆる利害調整であります。つまり利権を求めて、それが政治的なものであれ、経済的なものであれ、全て、利害で彼らは戦争を始めた訳であります。これだけ疲弊した戦争になれば、10年間も続けると、戦う方もちょっと疲れてきている訳でありますね。だから元の利権をそのまま獲得できるとは思っていません。しかし、なるべく最大限の利権を得ないと、戦うのを止めない訳です。それを引き出す訳であります。それは何かということですね。それは、多分武装を解けば新しい政府に入れてあげる、つまりポストを創ってあげるよとか、一般兵に対しては、復讐をされないように恩赦をあげる、戦争犯罪に対する恩赦ですね。それとか独り立ちできるように復員事業をやってあげるよとか、そういうことです。いわゆる利害調整をして武装解除の同意を得る訳です。それを一つ、一つ、一部隊、一部隊ずつやっていかなくてはならない。なぜ部隊ずつ個別にやっていかなければいけないかと言うと、内戦が疲弊化すると指揮命令系統は全てずたずたになります。多分終戦間近かの日本軍もそうだったと思うんです。つまり、本当に、上から下までの命令が効かなくなるんです。現場の部隊は夫々別行動をし始めます。だから、略奪とかレイプとか中国でさんざん変なことを日本軍はした訳であります。ああいうことが起こるわけでしょ、シエラレオネは正にそうなる訳であります。
もう、当初の革命の思想なんてどこかへいっちゃっているわけです。もうとにかく、女性をレイプすること、大量に殺すこと、略奪をすること、彼らがやってきたのはそれだけです。快楽殺人の域で、それだけです。だから我々は一つひとつ部隊を探し出して説得しなきゃいけないわけであります。今、ぼくらは非武装であると言いましたけれど、アポを取って、その中に入っていくときには、この写真にありますように完全武装をしたPKO兵士によって守られていきます。ある意味でこれは武力行使であります。しかし、ぼくは武装しません。その場所に着いてテーブルを囲むときには、こちらが武装すれば相手も武装します。もともと相手は武装しておりますから、話し合いの時だけでも武装を解かせるためには、こっちは非武装で行かなければならない。だからこっちは非武装で行くわけであります。けれども、そこに行くまでは必ず武装エスコートが付いてる。これは軍事行使であります。武装エスコートなしにやれるか。できません。ぼくは行きません。どんなに億単位のお金を積まれても、そんなことはやれません。危険でできません。
(写真を見せて)これは説得に応じた部隊の子供たちであります。これは、武装解除される前、順番を待っているところであります。みんな若い、本当に若いです。兵員登録をして、何人殺してきたか分かりませんけれども、自分が慣れ親しんだ武器AK47、通称カラシニコフと呼ばれる旧ソ連製の武器ですが、これを自分の手で壊させます。これにハンマーを入れさせます。ほとんどの子供がここで泣きます。
そして、忘れもしない2002年、1年ちょっとかけてやっと約5万人の民兵の武装解除が完了したときに、当時の大統領が戦争終結を宣言を致しました。武装解除完了、戦争終結の成功であります。これはそのときのセレモニーの様子であります。後ろで燃えているのが記念碑的に燃やしたカラシニコフであります。アフリカの現場の話はこれまでです。

第4節 人間が大量に殺されるのを防ぐために必要な武力介入はある

ロメオ・ダレールさんのルワンダでの経験、もしくは国連平和維持活動の一環としてぼくが行ったシエラレオネの経験から、皆さんに伝えたいひとつメッセージがあります。それはつまり、人間が大量に殺されるのを防ぐために必要な武力介入はあります。これは否定できません。
ルワンダのケースは、800人の完全武装したロメオ・ダレールさん指揮下の国連平和維持軍が、あのときに非常にマイルドな形の武力行使、つまり警察機能ですね、それをやっていれば80万人は殺されませんでした。これは、国連の後の評価によって、一応反省という形で評価をしたわけでありますけれども、非常に明らかな通説になっております。あのときに、それをやっておれば、80万人は殺されなかったということであります。
ルワンダの場合は、武力介入するべきであったのに、政治的な理由でそれができなくて、見過ごしちゃったということですね。シエラレオネの場合は、50万人殺されてからやっと介入したわけであります。我々が説得、政治交渉するときにも、平和維持軍は中立の立場で武力介入しています。これがなかったら政治交渉もできません。内戦終結もできません。この種の武力行使まで否定されてしまうと、どうやって内戦を止めていいのか分からない。ぼくには答がありません。そういう意味で必要な武力介入はあります。
しかし、ぼくには、武力介入で平和は達成できない、というひとつの信念があります。これは当たり前であります。しかし、人間が大量に殺されることを防ぐために必要な武力介入はあります。Alwaysではありません。こういう場面はあります、これは否定できません。ぼくの見解からいうと。それは多分、次の考え方を共有したときにのみ、意味あることであります。つまり、「アフリカ人一人の命とわれわれ日本人の命が同じであるならば」であります。これは平和憲法の前文で言っていることであります。つまり、自国だけの平和じゃダメだっていうふうに書いてあるわけですね。平和憲法というのは九条だけではありません。前文も憲法であります。そこでは、まさにこのことを言っているわけであります。ここはぼくは否定しようがないわけであります。

第5節 戦争犯罪を許したロメ合意はぎりぎりの選択

普通、武装解除合意とか、停戦合意というのは、戦争をやめる合意ではありません、そこまでいかないんですね、みんな戦っている中で、ちょっと疲れただろう、1日ぐらいちょっと撃つのをやめようよ、ここで将来について話し合わないか、というようなこと、それが停戦であります。数日間ぐらいちょっと撃つのをやめようよみたいな感じですね。そういった合意っていうのは必ずあります。こういうものがないと和平というのはありえません。
シエラレオネの場合は、1999年の9月に第三国、ロメというところで話し合いが行われたんですね、ロメはトーゴという国の首都であります。第三国ですね。そこに当時のシエラレオネの大統領と反政府ゲリラの親玉であるフォディ・サンコーを連れて行って、そこで円卓テーブルにつかせて停戦合意を結ばせた。それがきっかけとなって武装解除をし、なおかつ、それが内戦終結に繋がったわけです。これを停戦合意といいます。
(写真をみせて)これが当時の1999年のロメ合意が行われたときです。こちらの写真が当時のシエラレオネ大統領のカバーさんといいます。そしてこちらがさっきから名前がでているフォディ・サンコーであります。80万人を殺し、こどもたちの手足を切った張本人、こいつです。
この和平合意が発布されたときに、この国と非常にゆかりの深い旧宗主国のイギリスもしくは文化的・宗教的・歴史的につながりの深いアメリカの国民は腰を抜かさんばかりに驚きました、その合意の内容にです。合意というのはさっき言いましたように、全て利害調整です。でも、利害調整の内容が欧米社会を震撼させたわけであります。そこまであげちゃうの。そこまであげないと内戦は止まらないの、というようなことですね。それはどういうことかというと、戦争犯罪に対する完全恩赦であります。普通、一般兵というのは、命令されたから殺した、その命令に従わないと自分が殺されるからやむを得ず殺したという言い訳が、国際社会の通念として認められます。だから一般兵というのは、現在の戦争犯罪法廷においては、普通は恩赦されます。しかし、それを命令した人間、ましてやそのトップは許さないというのが今の国際社会の通念であります。だからICCもできました。国際刑事裁判所もできました。人権裁判をやるところであります。国連のスタンスというのも当然です。戦争犯罪は許さないというのが我々の通念であります。ところがこれは許しちゃったんです。(フォディ・サンコーの写真をみせて)こいつも含めて。そればかりではなく、この人物を副大統領に任命する、副大統領の他に、このフォディ・サンコーにブラッド・ダイアモンドを管轄する鉱山大臣を兼務させるというところまでやったのであります。それが、この合意の内容であります。そこまでしちゃっていいのかという話、そこまでやらないと内戦は停まらないのかということなんです。
通常こういう和平合意には必ず仲介者がいます。喧嘩には必ず利害に関わらない仲裁に入る人間が居るでしょ。普通こういうのは国連がやるんです。でも、さっきも言ったように国連にはできません。なぜかというと国連のスタンスとは戦争犯罪を裁かなければならないんです。ところがロメ合意では戦争犯罪を許しちゃうんです。では誰が仲介をやったか、いわゆるテロリストとの妥協を誰がやったかというとアメリカ合衆国です。これも当時のクリントン政権でした。民主党というのはこういうことをやるんですね。これがいわゆるシエラレオネにおける平和的解決です。
これが平和的解決なんですけれども、この合意が行われたときには反対意見が出ました。警告です。ほとんど厳しい警告です。それは、我々の友であるべき欧米の人権団体からです。人権団体がこの合意の内容に反対致しました。それはなぜかというと、戦争犯罪を許しちゃったら、国際通念の中で我々が一番大事にしなきゃいけない人権という概念、それが傷つくでしょう、ということです。この国際社会の中から、日本社会でもそうですけれど、人権という概念が失われたら我々はただの野獣です。人権というのは一番人間が保持しなければならない、これは大変な通念の一つです。唯一の通念と言ってもいいかもしれません。その人権を侵害する最も激しい行為が戦争犯罪です。戦争犯罪に対して国際社会が確固たる姿勢を貫けないとしたら、これはどういうことか。つまり、人権の概念を否定するということであります。ロメ合意は人権を否定するということであります。だから人権団体が反対するわけであります。でも、表立った実力行使の反対はしません。できません。なぜかというと、じゃあこれ以外に戦争を止める方法はあるんですか。50万人も既に殺されてるんですよ、ということなんです。ギリギリの選択です。

第6節 アフガニスタン問題の本質

 それと同じような経験をぼくはもうひとつしております。アフガニスタンの問題であります。アフガニスタン、当時はタリバン政権でした。アフガニスタンの位置1990年の後半からアフガニスタンをタリバンが制覇するようになりました。タリバンはイスラムの極右勢力ですから、アフガニスタンは中央アジアの急進イスラム国家みたいな、隣はイランですけれども、そこで住んでいたのかもしれません。
画像:National Park Service 9-11 Statue of Liberty and WTC fire.jpg当時のタリバンが非常にわけの分からないことをしたというのがこれです。テロ組織アルカイダと結びついたわけでありますね。そしてこれが起こります。皆さんの中にはこれを見た方、ニューヨークの現場にいらっしゃった方もいると思うんですけれども、同時多発テロであります。当時のブッシュ政権はいわゆるテロ事件を戦争として位置づけました。9.11の次の日にはCNNはこのテロ事件をanother Pearl Harbor、第二の真珠湾攻撃として報道しましたよね。アメリカの国民にとって、ここから戦争になってきたんです。
戦争ですから敵がいるわけです。敵を殲滅することは、国連憲章でも一応は保証されている個別的自衛権の行使ですね。アメリカはこの個別的自衛権の行使ということを法的根拠にして、何千キロも離れた、これをやったアルカイダを匿うタリバン政権、アフガニスタンに対して空爆します。宣戦布告します。アメリカはとにかく地上戦を戦うのが怖い。それは怖いですよ、アフガンなんて知らないわけですから。どんな高性能の武器を持ってしても、やはり地の利を知っている民兵たちに敵うわけがありません。だから、空爆主体の攻撃をいたします。しかし、こういったゲリラ戦というのは、空からどんなに爆弾を落としても勝てません。地上戦を誰かが戦わなくてはならない。でもおっかなくて戦えない。誰かにそれをやってもらわなければならない。ということでアメリカが目をつけたのが・・。
ちょっと話を戻しますけれども、当時はタリバン・アルカイダでアフガニスタンを制覇していた。そして9・11が起こります。アメリカが報復攻撃をします。空爆中心の報復をします。地上戦を誰かが戦わなければいけない、ということで、アメリカが目をつけたのが(アフガンの勢力を示して)これ、旗が立っている。軍閥です。アフガン人です。
つまり、アフガンというのは、複数の軍閥たちが完全武装して、誰が天下をとるかで内戦の歴史だったんですね。その混乱状態の中から生まれたのが、タリバンだったわけであります。ということは、タリバンが政権をとったときには他の軍閥たちは制覇されちゃったわけであります。痛い目に遭っているわけであります。同じアフガン人として、タリバンが憎くてしょうがない訳であります。そういったタリバン以外の軍閥が九つあったわけですけれども、アメリカは彼らを集結させます。それが北部同盟です。つまり、北部同盟に地上戦を戦わせて、アメリカは空から爆弾を降らせて、一応タリバン・アルカイダをパキスタンの方に追い出します。まだ殲滅してませんから戦争は勝利していません。タリバン・アルカイダはまだ健在です。オサマ・ビンラディンもこの辺をいまだにウロチョロしています。戦争は依然継続しております。でも、暫定的な勝利、つまりタリバン政権を倒したということで、一応勝利宣言いたします。
ここでアメリカはひとつの結論に達します。一応タリバン政権を倒したけれど、なぜアメリカを本土攻撃するような不埒なやつがこのアフガンの地から出たのか。それはつまりこのアフガンが歴史的に不安定だったから、だから過激派が生まれるんだということですね。これが現在も進行する対テロ戦の基本的な概念になっております。ここに親米の統一政権を作らない限り、アメリカに恒久的な平和はない、ということであります。つまり、対テロ戦のいちばん基本的な概念というのは、ここに親米の統一政権を作るということです。このために、日本が協力することになります。当時の小泉政権は真っ先に手を挙げて、これに協力することにしたのであります。
他の軍閥はと言いますと、一応タリバン戦に勝利したわけでありますが、もともと仲の悪い連中ですから、タリバンを追い出したその翌日から、また内戦が始まります。百戦錬磨の武将たちですから、アメリカが自分たちを粛清するという動きは敏感に察しているんですね。アメリカを全く信用しておりません。戦略的に協力はしたけれども、アメリカを全く信用しておりません。つまり、ソ連とかアメリカとかの超大国に翻弄されてきたのがアフガンの内戦の歴史であります。だから絶対信用しません。だから彼らが何をやり始めたかというと、軍備を増強し始めました。兵員も増強しました。それには資金が要ります。その資金をどこから得るのか。麻薬であります。タリバン政権の時にはほとんどゼロであったケシの栽培をせっせと再開いたしました。そして、タリバン政権崩壊1年を経ずして、アフガニスタンは世界に流通する天然ケシの6割を生産する世界最大の麻薬国家になりました。去年はそれが93パーセントになりました。いまアフガニスタンは史上最凶の麻薬国家です。それは軍閥たちが粛清されるのを恐れてやり始めたことです。
九つの軍閥のうちの何人かは内戦を始めました。(写真を見せて)そのひとりがこれです。ドスタムであります。日本でテレビに何回も出てきたと思うんですけれども、彼の支配地域に行くと、ひとつの王国です。こんな肖像画がどこにでも架かっているわけです。彼は自分の顔を彫りこんだ貨幣まで流通させています。まさしく王国です。うまくいっている金正日体制みたいな感じなのですね。みんな将軍様が好きっていう風ですね。こういうのが、あと八ついるわけです(笑)。

ODA予算100億円を使った対米軍事協力

彼らの力の背景はこれ、重火器であります。戦車、大砲、スカッドミサイルまで持っていました。これらを粛清しないかぎり統一国家がつくれないということになります。どうやって誰がそれをやるのか、ということでやらされたのが日本なんです。当時の外務大臣、川口さんがまんまと騙されて、その誰も引きたくないカードを引いた。にっちもさっちも行かなくなって、丁度シエラレオネで武装解除を成功させて国連で名を挙げたということで、ぼくのところに「行ってくれ」と頭を下げてきた訳ですね。それで、ぼくは行ったわけです。そこからぼくは現場に関わるようになったわけです。
ちょっと他の話をしたいんで、今は武装解除の話はしません。大変な作業だったんですけれども、成功しちゃったんです。勇気のあるNHKのクルーがドキュメンタリーに作ってくれて、これはそのときの写真であります。
これも、さっき言いましたように、一人ひとり、一つひとつの軍閥、その配下にある司令官たちを説得するわけですね。
アフガンの軍閥は、シエラレオネのちんけなやくざみたいな民兵とちがいます。ほんとに統制の取れた軍なんです。それらを武装解除するには、ほとんどの場合、大物たち、司令官たちの政治的なポストの確保です。つまり、武装を解いて統一政権を作ることに協力する、自分たちの持ってる武器を、われわれがアメリカが作りたい新しい国家の、新しい政府の国軍に委譲する、のですね。破棄するんじゃないですよ。全部その武器を新しい政権の新しい国軍の管轄化にする、手放すということです。それに協力すればポストをあげるというわけであります。それを武装解除する前に信じさせなければいけない。彼らは武装を解いてしまえばもう自分たちの力の根源が失われると思うから、なかなか武装解除をしない、したくないんです。それを信じさせなければいけないんです。通常は、国連が、中立の立場ですから、こういうこと、武装解除をやるんですけれども、アフガンの場合は、国連は何もできません。なぜかというと、アフガニスタンはアメリカの戦争のプラットフォームですから、国連が国連平和維持軍を擁するような形で介入するようなことはありえません。安全保障理事会の政治構造を考えれば、そんなことはできません。そんなことをやろうとしたら、ロシア、中国が反対します。これは一加盟国アメリカの戦争のプラットフォームの平和活動です。ですから国連はこういうことはやりません。殆どのこの復興のお手伝いと言うのは全て二国間でやることになったわけです。その一番困難な役割が回ってきて、それを引き受けてしまったのが日本政府です。武装解除部隊です。
約二年間かけて、皆様の血税を100億円使って、この武装解除を完了いたしました。
特に重火器、戦車、大砲の類は、ほとんど100パーセント、軍閥の手から離れて、新しい国軍の管轄下になっております。5万6千人、その一人ひとりにカラシニコフを出させました。ほとんど同じ数のカラシニコフとかRPGと呼ばれる対戦車砲も全て回収し、それは新しい国軍の兵士が今使っております。
敏感な皆様の中には、日本が皆様の100億円使ってそんなことできるの? と思われるかもしれません。つまり、これは武器を地上からなくすためにぼくらはやったんじゃないんです。新しい国軍を作るために武装解除した、事実、今対テロ戦の最前線で戦っているのはアメリカ軍ではありません。最前線で戦っているのは新しい国家、カルザイ政権ですけれども、その新しい国軍の兵士達です。彼らが今最前線で戦っています。彼らが使っている武器は全て日本の血税で集めた武器です。これは対米軍事協力です。そのために  100億円を使いました。これは防衛庁予算ではありません、皆様のODA予算です。それを使ってやりました。厳密に言いますと、これはODA大綱違反です。ぼくはこれを確信犯的にやりました。全責任はぼくにあります。
日本はこのときにもう一つ面白いことをしました。それが非武装の軍事監視団です。これに非武装の自衛隊員を一人つけました。武装解除というのは非常に脆弱な政治プロセスです。まず、みんなが信用していない状況で停戦させなければいけない。それで停戦を固定化し、定着化して武装解除にもっていかなければいけない。一発の銃声でまた戦闘が始まる状況です。そういうところに裸で入って行くのが軍事監視団の役割です。「おれを撃ったらおしまいよ」という状況を自ら体現するのですね。普通これを国連がやるのですけれども、この際はこの役割も国連はやってくれなかったということで、日本がやる羽目になりました。延べ20名ぐらいの武官を各大使館から出してもらい、非武装のグループをつくって、ぼくは団長という立場で彼らを現場に送ったわけです。普通こういうことをやると必ず殉職者が出るんですけれども、幸い誰も死なずにできました。

軍閥の武装解除でタリバンが戻ってきた

今、アフガニスタンがどうなっているかというと大変なことになっています。武装解除をやったんだから平和になっているだろうと皆さん思われるかもしれませんけれども、逆になってしまいました。(映像で)これは武装解除する前の様子です。旗がまだ立っております。これが軍閥です。僕らは軍閥の武力を解きました。何が起きたかというと、当然、抑止力がなくなったところで、タリバンが入ってきております。これは当然予測できたことなんですね。つまりタリバンを追い出したのは、地上戦を戦った彼ら、北部同盟なんです。それは統一政権を作るために障害ですから、武装解除しなければいけない。でもその武装を急に取ってしまえば、抑止力のなくなったところでタリバンが入ってくるのは当然であります。だから、多国籍軍がもっとがんばらなきゃいけないし、国軍がもっと強くならなければならない。
しかし新しい国家なのですから、国軍をゼロから作るなんてことは、1年や2年でできることではありません。ですからその問題に気がついた時に、ぼくはこの武装解除をスローダウンしようとしたんです。けれども、アメリカがそれを許してくれなかった。それで結果的にこうなった。なぜそれができなかったのか。なぜアメリカがぼくの言うことを聞いてくれなかったのか。それはアメリカ自身の問題なんですね、ちょうど2004年、ブッシュさんが再選されたアメリカの大統領選があったのですね。それでアメリカは成果を急いじゃったのです。それでそれができなくて、対テロ戦の首謀者であるアメリカは、自分で自分の首を絞めたことになります。今、タリバンがでかくなっております。勿論、パキスタン情勢が不安定だということも一因ですけれども。軍事的に見ますと、今、タリバン・アルカイダが力をぶり返しているのは、武装解除が作る穴を埋めることなく武装解除をやってしまったことが原因であります。

NATOの軍事作戦への参加は集団的自衛権の一環

今、アメリカは、対テロ戦を通称OEF(Operation Enduring Freedom)「不朽の自由作戦」という形で継続しております。アメリカは、自分で始めたこの自衛戦にアメリカ以外の国をいかにして巻き込むかということ、いわゆる国際化することに非常に苦心して参りました。これはイラクでも同じですね。
それで今、OEFはNATOの管轄です。NATOにとっては、この作戦は集団的自衛権の発動にあたります。つまりアメリカの自衛権の行使から始まったのがOEFですが、これが今、アメリカも加盟国でありますけれども、NATOの自衛戦となっています。NATOとしての自衛戦、戦争です。
日本が今参加しているのはOEFの下部作戦であるOEF-MIO (Maritime Interdiction Operation)、インド洋の海上阻止作戦であります。インド洋に日本は自衛艦を投入し、給油活動作戦をやっております。今もやっております。これはどういうことかというと、日本は、自らが加盟もしていない軍事同盟NATOの自衛戦に参加していることになります。明確に我々は戦争に参加しております。それも我々には直接関係のないNATOの自衛戦に関係していると思います。ここを皆さんお考えください。

メディアによる過剰な悪者イメージの刷り込み

当時、まだタリバンが力を誇っていたとき、力の誇示の一環として、国際社会に挑戦するような意味で、有名なバーミヤンの石仏を破壊しました。偶像崇拝を禁止するのがイスラム教らしいですから、そのこともあって、これをやったわけですね。世界遺産級の史跡を破壊しました。これが繰り返し、繰り返し欧米のメディアで報じられました。日本でもそうでした、日本の文化人もこれに悲鳴をあげました。こ破壊以前のバーミヤンの大仏のうちの1体。全長は55mあった。んなことをするタリバンて、なんて悪いやつなんだっていうことです。これが、毎日、毎日、繰り返して放映されました。日本でもそうです。欧米でもそうです。これでタリバンが悪いやつらだということが一般市民の間に刷り込まれました。我々もそうです。確かに大変悪いやつかもしれません、でも毎日放映するほど悪いやつでしょうか。この辺が今の北朝鮮報道と酷似していると思います。金正日体制は悪い体制かもしれません。しかし、毎日、毎日、報道するほど悪いのでしょうか。
この辺の反省、タリバンに対する報道というのは、アメリカの大手のメディアはもう既に行っております。まだそれを全然やってないのは日本のメディアだけです。つまり、メディアによる悪者の創出ということであります。刷り込みであります。タリバンも北朝鮮も悪いんですよ。ぼくは悪くないと言ってるわけじゃない、悪いんですけれども、それほど悪いんでしょうかということです。世の中にはもっと悪いやつはいくらでもいるわけで、もっと酷いことをしている政権はいくらでもある、ということですね。

タリバンとの妥協を模索するカルザイ大統領

これがカルザイさん。ブッシュさんの傀儡であります。カルザイさんは数年前からブッシュさんに大変に気を遣いながら、タリバンとの政治的な和解を模索し始めました。政治的な和解です。なぜアメリカに気を遣わなければならないか、それは当たり前です。ブッシュさんは、世界の敵=テロリスト=タリバン、そしてテロリストをイメージ的にうまく創出したおかげでアフガンのタリバンとの戦争を正当づけました。そのタリバンと和解することになれば、じゃぁ一体あの戦争は何だったんだ、という話になる訳です。ハーミド・カルザイだから、アメリカに大変に気を遣いながら、カルザイさんはこのテロリストとの妥協をやり始めました。これはどういう理由かと言うと、軍事的に果たしてテロリストとの戦いに勝利できるのか、ということであります。これはボクの尊敬するペシャワル会の中村哲さんが繰り返し言っていることであります。こういうテロリスト組織、民兵組織というのは一国の軍隊じゃないんです。一国の軍事組織じゃないんです。
テロリストっていうのは民衆から生まれるんです。この民兵組織(タリバン)にピラミッド型の組織が成り立つとしたら、トップはおそらくアルカイダと結びついているコアの連中ですね。そうでない中庸な人たちもいますし、裾野は一般市民、一般農民なんです。テロリストは一般市民から生まれるんです。ですから、これに対する軍事的な勝利というのはありえない。というのは、一般市民を全員殺せますか、ということです。殺せません。これが、現代の近代戦なんです。ですから、アメリカの軍事的な首脳部は当時からぼくにいつも言ってたんです。これは、新しいことでもなんでもない。最近になってから、この戦争につき合わされてるNATOの加盟国の国防大臣、名前を出すとブラウンという新任のイギリスの国防大臣ですが、彼なんかはもう公然のポリシイとして言っております。つまりアフガン戦というのは軍事的には勝利できないということです。軍事的な手段だけでは絶対に勝利できないということです。それは当たり前なんです、我々が想定する敵は民衆なんですから。だから政治的な和解以外に出口が果たしてあるだろうかということで、カルザイさんは気を遣いながらやり始めたわけです。
それが決定的になったのは去年3月、アフガンの国会を通過した恩赦法です。全ての戦争犯罪、上から下まで、投降すれば許すということです。つまり政治的な和解の法的な枠組みは既にアフガニスタンにおいてできちゃったんです。これは、また、シエラレオネのときと同じように、欧米社会を震撼させました。日本ではこの恩赦法自体も全く報道されませんでしたけれども、欧米社会を震撼させました。同じように、欧米の人権団体が警戒感を発表いたしました。つまり、過度の完全な恩赦というのはありえない。それは人権という概念を傷つけるものである、ということです。しかし表立った、実力行使的な反対はしませんでした。じゃぁこれ以外に方法はあるのか、ということになります。

テロリストとの政治和解、「正義か平和か」

皆さんに、一つのメッセージとして、考えていただきたいのはこれです。
「正義か平和か」ということです。この正義は、別にブッシュさんの言ってるような正義ではない、悪いものを裁く、戦争犯罪を裁くという正義であります。正義か平和か、つまり戦闘をやめるか、どちらかの選択ということです。この両方を満たす戦争の終結というのは、ぼくは経験していないし、考えるのは結構難しいです。日本とドイツだけでしょう、あとにも先にもUn-conditional Surrender、無条件降伏で戦争を終えたのは。多分日本とドイツだけだと思うんですけれども、多分これからもないでしょう。戦争の終結というのは痛みわけです。妥協が要ります。
それで、この民衆から出てくるテロリスト、敵を想定すると、もっと問題になります。終結するときには、我々が一番大事にしなきゃならない基本的な通念、人権という概念ですけれども、それを少し傷つける、大分傷つけるようなことで妥協しなければならないようなことがあるだろう、事実アフガンがそうなりつつありますし、シエラレオネではそうなりました。その両方にアメリカ合衆国が深く関わっております。これをダブルスタンダードと別名言うんですけれども。
ここで我々日本人、特に護憲派の皆さんが、普段気軽に口にする「平和的な解決」とはいったい何なんでしょうか、ということであります。去年、テロ特措法を継続するかどうかで、すったもんだがありましたね、あれで国会に呼ばれました。そのときに、タリバンとの和解の可能性、こういう動きがあるということを、野党・与党の国会議員の皆さんに言いました。そうすると案の定、野党、つまり社民党、共産党の議員から意見が上がって、ほとんど手を叩いているわけですけれども、政治的な和解こそ平和憲法を頂く日本が役割を果たせることなんだ、というふうなことを言うわけであります。まさしく、そうかもしれません。しかし、その時、ぼくは次のようなことを言いました。
「ちょっと待っていただきたい。政治的な和解とは、そんな軽いものじゃないんですよ。遺族つまり被害者の家族の気持ちになっていただきたい。人権という概念が傷つくということがどういうことかを考えていただきたい。テロリストとの和解、政治的な和解という問題を、それが不可避的なものであるにしても、たかが自衛隊を出すか、出さないかの対案の一環として考えて欲しくない。野党が望みたいのは自衛隊を出したくない、それだけでしょう。世界の平和とか、世界の秩序とか、人権という国際通念がどうなるのかということを全く考えてない、自衛隊を出すことに反対したい、それだけでしょう。テロリストとの和解、平和的な解決は、そんな小さな問題じゃないですよ。自衛隊を出すということは、日本にとって、日本人のぼくにとって重大な問題かもしれませんが、そんなことは、国際的に見たらどうでもいい作戦です。自衛隊の貢献なんてのは大変小さな貢献なんです。自衛隊は出したところで、600人、700人ぐらいでしょう。彼らは戦闘部隊として弾を撃てませんでしょう。今やってるのはガソリンスタンドでしょう。民間業者でもできます。価値ないんです、あれは。そんなことの対案として、この問題を考えていただきたくない。その真実さを、真剣さを知るには、今日本人にとっては、北朝鮮問題を考えて下さいと言うことです。等身大の我々の問題としてわが身に投影させて考えていただきたい。つまり、今の北朝鮮の金正日体制と政治的な妥協をするということはどういうことなのかということです。それを、横田めぐみさんのご両親の顔を思い浮かべながら考えて下さい。そのぐらい真剣に考えた者が、この平和的解決を語る資格があるということであります。」
これを言ったら、野党の皆さんは黙ってしまいましたけれども。

第7節 予防する責任Responsibility to Preventと日本の潜在能力

最後に皆さんにメッセージとして送りたいのは、さっきは「保護する責任」という言葉が出てきましたけれども、「予防する責任(Responsibility to Prevent)」ということであります。
戦争というのは儲かります。儲かるんですね。破壊があれば、建設があります。戦争で儲かるのは軍産複合体とか武器商人だけではありません。先ず、建設業者が儲かります、破壊があるわけですから。NGO、人道支援団体も儲かります。つまり、人道的ニーズを作るのが戦争ですから。みんな儲かるんです。メディアも儲かります、戦争報道ということで。それを我々は茶の間でビールを飲んでテレビを見ながら娯楽として楽しめる、そういう意味で、戦争を消費するという文化の中に我々は組み込まれているわけです。みんな儲かります。儲からないのは多分被害者だけです。だからこれは、ひとつの業界に、でかい業界になっているわけです、戦争というのは。これを止めるにはどうしたらいいか分かりません。みんな儲かっちゃってる訳ですから。
儲からないのが予防ですね、地味な活動なんです。戦争には必ず予兆があります。その予兆をきめ細かく、情報として分析して、少し煙が出てきたらそこで対処する。それが予防なんです。そのときには対話事業とか、そのぐらいのもので、あまりお金がかからないことで済んじゃうかもしれない。そういうことを積み重ねなければいけないんです。じゃないと予防ができないんです。あんまりお金が動きそうな業界にならないでしょう。でも、これをやらないとダメなんですね。ここをどうやって我々が責任としてそれを考えるかということであります。
この予防する責任を実行する上で、多分、日本というのは、ボクは最後の明るいメッセージとして申し上げたいんですけれども、潜在能力を一番持っている国のひとつであると思います。つまり、予防というのは戦争が起こる前です。戦争が起こる前、内戦が起こる前というのは、主権国家がある時です。国家が崩壊してない時です。そういう時の紛争の火種の問題というのは国内問題なのですね。国内問題である限り、国連は介入できません。さっきも言いましたように、国連というのは主権国家の集まりなんです。戦争が起こってしまって、主権国家が崩れてしまった時には国連は介入しやすいですけれども、この予防の段階では、国連は実質的に何もできないんです。じゃ誰ができるのかというと、これは二国間援助しかないんです。二国間援助でも、その予防する時に深い関係を築ける国、経済力のある国、ODAを沢山あげられる国、日本です。なおかつ、「お金をいっぱいくれるけれども、何か裏がありそうだな」、アメリカがやったらそう思われるでしょう。そういう警戒感を抱かせない国、それが日本です。日本は今のところ人畜無害です。そのイメージです。

第8節 日本に対するアフガン人の「美しい誤解」

アフガニスタンは我々を信用しました。アフガン人は二つのイメージで日本人を捉えております。これは小さな軍閥までです。そういう教育を受けております。
一つはヒロシマ・長崎。つまりアメリカに大変な目に遭ってゼロから這い上がった国であるということ、経済大国であるということ、もう一つが日露戦争です。あの憎いロシア、ソ連に侵攻されてますからね、アフガン人はロシアが大嫌いです。あのロシアに勝った国ということですね。つまり、勇猛果敢で、なおかつアメリカにひどい目に遭って、独立して経済大国であるということですね。もちろんアフガン人を沖縄に連れて行ったら腰を抜かして驚くと思うんですけれども(笑)。日米軍事同盟を知らないわけです。殆ど知らないわけでありますね。日本にはそのイメージがあるということなんです。
多分、憲法九条があること、憲法九条は知られておりません、日本政府は憲法九条のことを全然PRしてませんからね。知られてるわけがないんです。でもアフガニスタンの人は多分憲法九条のことを気づいて、我々の体臭を敏感に感じ取っている、多分、それが説得だけで武装解除ができたひとつの原因だったと思うんです。ぼくは、それを「美しい誤解」というふうに呼んでおるんです。でも、こういった特質がある国であるからこそ、日本には予防する責任がある。その潜在能力があるのです。なぜぼくが潜在能力と言うかというと別に能力があるわけじゃないからです。日本は潜在能力がありながら、見事にやってこなかったでしょ。
ODA外交というわけで、アフリカをせっせと支援するわけですが、この間のアフリカ会議でアフリカの首脳を前にですよ、日本が常任理事国に入るときにはよろしく、なんてことを言うでしょ。ああいう馬鹿なことを言うことないですよね。もし信頼感を得ようとするなら、少なくともアフリカの全ての国に大使館ぐらい置きなさいよ。中国だってそうしてるんですから。中国なんか我々からODAをもらいながら、もらいながらですよ、日本が大使館を置いてないようなところに、ちゃんと大使館を置いて深い関係を築いてきたわけです。その歴史なんですね。アフリカは中国なしでは生存できなかったんです。今、ダルフール問題で中国を非難してますけれど、やり方が大変悪いですけれども。しかし、ひとつの事実として言えることは、アフリカは中国のおかげでいままで生存できてきたのです。旧宗主国は、日本も含めて、見捨ててきたわけでありますから。
ぼくはアフリカで暮らしていた10年、シエラレオネ、そのあとケニヤ、エチオピアにいましたけれども、日本の商社もどんどん、どんどんアフリカ大陸から出て行きました。それと入れ違うように華僑、印僑が、印僑はずっと入っていましたけれども、入っていった訳であります。中国はそれだけ我々と正反対のことをアフリカ大陸にずっとしてきてくれたということで、批判をしつつもなかなか諸手で批判しにくいんですね。そういう意味で、この「予防する責任」というのは「相手を知る」ということであります。これをやらない限りできないし、重大な責任として考えるということです。さっきも言いましたように、この潜在能力が我々にあるということです。でも、それをまだ実力として持ってないということであります。

第9節 九条を世界平和に役立てることが肝心

ぼくは、海外の学生を自分の講座に呼んで指導していますけれども、その中のノルウェーからきている学生がいましてね、彼はいまPh.Dをやっていますが、「もしノルウェーみたいな国が憲法九条を持っていたら、世界は変わっていただろう」と言われるんですね。彼に限らずボクは北欧の研究者によくそのようなことを言われるわけです。ノルウェーなんていうのは対話の外交を外交方針として、オスロ合意であるとか、そういうことをやってきたでしょ。でも、NATOの加盟国になってるという、ひとつのIdentity Crisisがあるわけですね。もしノルウェーみたいな国が本当に憲法九条を持っていたら、世界が変わっていただろうと言われるわけです。つまり、どういうことかというと、暗にこれは、九条は日本人にはもったいない(笑)。そう言われているんですね。まさしくそうで、ボクが言いたいのは潜在能力はあるけれどもこれが能力にはなっていないということです。それは多分ボクを含めて皆さんがこれからこの九条を実際に世界平和のためにどう使っていくのかという、実際のこと、手法をまじめに考えるということ、それに尽きると思います。
以上をもって終わりであります。ありがとうございました。   

=講演終了=

質疑応答

(質問用紙で出された質問に対し時間の許す限り回答していただいたものです)

Q1

民主党の小沢党首は、PKOには日本の自衛隊を送るべきと主張していますが、
どうおもわれますか。

: たいへん鋭いご質問ですが、これはアフガニスタンの話を思い浮かべてください。今アフガニスタンは、通称OEF「不朽の自由作戦」、これは対テロ作戦なのですけれど、アメリカの個別的自衛権でNATOの集団的自衛権ということで、自衛戦ですね。OEF、これは戦争です。
もう一つ、実は国際部隊の作戦があります。ISAFという国際治安支援部隊。これも朝日新聞などいろいろな新聞で、テロ特措法を延長するかどうかの議論のときに紙面を賑わしましたが、ISAFは国連憲章第7章を法的根拠に、国連安全保障理事会の承認を受けている国際部隊です。ルワンダとかぼくがシエラレオネで所属したようなPKO(国連の平和維持活動)を発動するための法的根拠、人間の安全保障、つまり、ある可哀想な国で重大な人権侵害が起って、その国には守る・対処する力がない、そのときは国際社会が全体としてがんばろう、これも国連憲章第7章にある。こちらは戦争ではない。こちらは国連が認める、人間を助けるための人間安全保障的措置。この二つの作戦がある。
小沢さんは去年から「自民党が押し推し進めるOEFの下部作戦である海上阻止活動のほうに自衛艦を出して給油活動をしてきた。あちらは戦争の手助けだから駄目なんです、自衛隊を使うならば、国連の承認を受けているISAFのほうにすべき。」そういう主張をしつづけてきた、それが民主党の小沢さんです。それにぼくは7割くらいもっともだと、すごく的をえていると、いや7割かな6割くらい賛成をするのですけれども、ぼくが今は自衛隊を出してはいけないというのは、次の2つの理由です。
ひとつは、小沢さんは法的解釈を間違えている。国連が国連憲章第7章にもとづいて派遣する国際軍事活動には、2種類あるのです。一つは、国連が承認して、なおかつ国連が指揮をとる軍事作戦、これがビデオで見せたロメオ・ダレールさんが指揮した国連平和維持軍、ブルーヘルメット、ぼくがシエラレオネで彼らを使って武装解除することになるあのブルーヘルメット、これが国連が承認して、国連が全責任をもって軍事作戦をしているいわゆる国連軍。
もう一つあるのです、国連は承認するけれども国連が指揮をとらないのがあるのです。それがISAFなんです。アフガニスタンです。わかりにくいと思います。つまり国連は承認しているけれど指揮権は国連にないのです、ISAFの場合は。これはNATOにあるんです。軍事同盟です。
この区別がなかなか日本人にはつかない。国連の承認するものの中でも2種類あって、これが天と地ほどもちがう。なぜ天と地ほども違うかというと、国連が指揮をとるということは国連が全責任をとることから、中立性は100%。不祥事を含めて軍事作戦では必ずいろんな問題が起こるけれど、国連がその全責任をとるわけです。国連がやるんですから、まず戦争ではありません。国連が定める武器の使用基準は、たいへん厳しいものです。それに束縛されます。だから、非常にマイルドな平和維持作戦、それが、国連が指揮を執る国連が承認する武力であります。
そうでないものがある。国連が承認するけれども、NATOのような軍事同盟が指揮を執るのがある、それがISAFです。日本にとって、これはどういうことかなのかと申しますと、もし国連が指揮を執るものに自衛隊をだすならば、これは指揮権を委ねることです。普通、国連の平和維持活動に参加するということは、指揮権を委ねることなんです。これが日本で常識として理解されていないことなんですけどね。ふつう多国籍軍に参加することは、指揮権を委ねることになるのです。小沢さんの議論でいうと、自衛隊の指揮権を国連に委ねるのであれば国権の発動たる云々の話ではないから9条とは関係ない、9条から距離を置く、つまり9条はそのままにしておく。根拠はたぶん憲法98条第2項、国際条約、つまり日本が承認した国際条約を真摯に履行しなければならないというのがあるのです。そちらを根拠にして、国連に指揮権をゆだねて自衛隊を出す。その場合は、全責任は国連にある、国権とは関係ない。それを狙ったのではないかと思う。これはぼくの意見ではないですよ、小沢さんの意見です。
ところが問題は、指揮権を委ねるというのは、国連が指揮を執っているものならともかく、ISAFのほうはNATOが指揮権をもっている。NATOに指揮権を委ねられますか。NATOとわれわれには条約関係はありません。だって軍事同盟で、われわれとは関係ないですから。国連とは条約関係がありますよ。ご存知のように、戦後日本が批准した第一号の国際条約は国連憲章ですよ。これに、どの条文にも留保することなく、全面的に受け入れて国連憲章を受け入れて、国連に加盟したのです。この意味で日本国憲法98条第2項の精神によれば、国連に全面的にわれわれは協力しなければならないのです。しかし、国連が決めたことのすべてに自衛隊を送る、送らないという話ではないですよ。どの国連加盟国にとっても、その国の憲法のほうが上位概念であり、だから、それぞれの国の、その時々の政治判断が求められます。国連の言うことをすべて聞かなければならないということはないのです。国連憲章には、まず罰則はありませんので、国連至上主義なんていうのはありえない。小沢さんが言うように。その時々の政治判断によります。でもしかし、98条的には、われわれは国連が決めたことは真摯に受け止めて行動を考えなければならない、というは基本姿勢です。そこを彼が狙ったのです。ところが、国連が承認する作戦に二種類あって、ISAFというのは違うのですよ。そこを小沢さんは間違っている。
いま自衛隊を送ってはいけないもう一つの理由は、「美しい誤解」は、これで崩れ去るでしょう。つまり、そこに地上部隊として自衛隊をアフガン本国に送れば、アフガン市民がこれを見ます。軍服を着た日本人を見ます。そこで、たぶん日米同盟のわれわれの本当の姿が見られてしまうのです。それがいけないことかどうかぼくにはわからないけれど、美しい誤解はなるべく誤解のまま、それが真実の姿になっていただきたい、その余地は残されていますので。その意味で去年から民主党に協力はしたのですが、そこが小沢さんの意見と食い違って最後に仲違いしちゃったんです。(笑)これがぼくの答です。
どう思われるか、厳密な議論をしなければいけない。まず戦争への協力と国連の安全保障へ協力することの二つを区別する。しかし国連の安全保障で国連が発動する作戦の中にもまた二つのものがあるということ。直接、国連が指揮を執るものとそうではないもの。それは自衛隊を外に出すときに指揮権をどうするかという問題が非常に重要になってくる。そこを区別して考えなければいけない。それが自衛隊の派遣問題です。
注)ISAF(International Security Assistance Force)国際治安支援部隊
PKO(United Nation Peacekeeping Operation)国連の平和維持活動

Q2

日本の商社は、九条のお蔭で、戦後世界各国、どこでも仕事ができ、大きくなってきたと思いますが、どう思われますか。

: 九条のお蔭で、皆さんが商いができたというのですね。ぼくはそう思いますけれど、皆さんの母体である経団連はそう考えていないみたいですね。(笑い)どういうわけか改憲に向かって、もうまっしぐらという形ですね。つまり彼らの議論は、危機が起こったときに自衛隊が武装して海外の日本人を守れないじゃないかという。皆さんが危機に瀕したときに自衛隊が助けに来てくれないという。だから自衛隊にとって恒久法が必要であるし、最終的には憲法を変えなければいけないという議論ですよね。皆さんの命を守るため、九条をかえなければいけないというのですね。どう思われますか。ぼくに質問するより皆さんが自分で考えたほうがいいと思います(笑)
あえて言わせていただくと、たぶん経団連の方々は映画の見すぎではないですか。アメリカは、顔を真っ黒に塗った秘密工作員が助けるという、あんなイメージがある。あんなことはしないです。普通は軍隊の人ではないですよ。公人の保護やその国の人間を守るのは。軍隊は要人保護の訓練を受けていません。軍隊はあくまで敵を殲滅するためのものです。人道支援とか要人保護とかは、そういうことはしていない。イラクでもアメリカの要人をまもっているのは警備会社ですよ。軍隊は守る訓練は受けていないのです。自衛隊はもちろんそういう訓練を受けていないわけです。それはやはり、警察の特別部隊であるとか民間の警備会社、日本のセコムはどうか、人間を守るということは許されていませんけれど、あれにあたるもの(民間警備会社)が、海外で商いでしているのです。欧米の警備会社が要人保護をしているのですね。自衛隊が邦人を守らなければいけないというのは、映画の見すぎとしか言いようがない。けっこう日本人に話すと説得力をもってしまうのですね。日本人も映画をみていますから。この辺をどうやって真実を伝えていけばよいのか。
それから、もうひとつ、よく言われるのは、在外公館を守れないのではないか、これもいうんですよね、政府の要人が。でも、在外公館を自国の軍隊で守らせるというは、アメリカだけ、アメリカでも余程のときだけしかやらないですよ。在外公館に自国の軍を入れるのですよ。もし民衆のデモ行進を阻止するとして、それに対して軍隊を入れて発砲して死傷事件を起こしたら外交問題ですよ。こんなリスクを成熟した国ではやらない。なんでこういう非常識なことが日本では常識になってしまうのか、よく分からない。軍隊が自国の在外公館を守るなんてことはどこの国もしないですよ。アメリカしかやらない。アメリカでもよほどのときしかやらない。だから、まぁ映画の見過ぎなんです。(笑)これがぼくの意見です。皆さんの命にかかわる問題ですから、皆さん経団連に協力するかどうか、皆さんが判断してください。

Q3

最後は、NGOのことですが。

: ぼくは当初NGOとしてアフリカに行ったのです。そのときは欧米のNGOです。欧米のNGOと、日本のNGOとの決定的な違いというのは、まず規模の大きさです。天と地ほど違います。国連よりでかいのです。当然のように、それだけの責任ある仕事をまかされる現場の責任者にはお金をいっぱい払います。皆さんご存知のように、欧米では非営利と営利の垣根はありませんね。非営利と営利の間を優秀な人材は行ったり来たりします。営利企業で管理職を務めた人が非営利の分野に同じような給料をもらうということで行く場合もありますし、その逆もあるのですね。どんどん入れ替わっていくのです。国連とか行政、官のほうにも飛び火するのですね。まったく垣根はない。日本でいうと非営利というと、ボランティアで、どっちかというと社会のはぐれ者とか、そういう人がやるというイメージがある。欧米はそうではない。
ぼくは非常にいい給料を得ていました。そういった欧米の団体の資金源はなにかというと、これは自己資金です。自己資金というのは民間から集めたお金です。政府からもらう場合がありますが、NGOはNon Governmental Organizationですから、つまり政府と対抗しなければいけない、政府の言いなりになってはいけない。われわれは人道主義ということを前に立てています。国益ではありません。国益のためではあとあと問題になります。人類共通の人道のために働くのがNGOです。だから公的資金をもらうかもしれないが、ある一定の比率以上はもらわない。ぼくのいた団体では全体の資金の2割以上は公的資金を絶対もらわない。8割はすべて自己資金で賄っていました。これが鉄則ですね。
これが逆転するのが日本のNGOです。つまり自己資金がないのです。自己資金がないということは、皆さんが金をださないということです。寄付文化という言葉があります。寄付の文化、これは日本には驚くほどない。これは欧米で働いている人はよく分かると思いますが、欧米では当たり前のように寄付をするのですね。寄付文化です。税金を納める以外に公益のために自ら身銭を切るという文化、これがない、だから日本のNGOは自己資金がない。だから生存するためには公的資金をもらうしかない。政府の言いなりになってしまう。では、ほんとうのNGOなのか、ほんとに国益のために働かなければならない、それがNGO本来あるべき姿ではない。日本ではNGOという概念はなかなか成立しにくいということです。NGOというのは市民社会のなかで働く概念です。民主主義、真の民主主義を実現する意味では、民主主義というのは多数政党制だけではありません。市民社会の強さ、これが左右します。その意味では日本はまだ民主主義は実現していないのではないかというのがぼくの意見ですけれども。
日本に寄付文化がないということは、ぼくはずっと言い続けているのですが、それでも日本国民は寄付をしない。ほんとうにしないです。日本のNPOセンターが統計を出したのですが、つまり税金以外に公益に出すお金の総額を人口で割ったもの、日本は発展途上国並みだそうです。大変に情けないです。これはどうなんでしょうね、これは日本の特質だというのでしょうか。だから日本が遅れているというのか、われわれは、どんなに騒ごうが、泣こうが、お上志向なんでしょうか。行政に税金を払っているから自分の責任はそれで終わったと、あとはお上に頼るという、やっぱり悲しいですけどね。まぁ、これを言い始めると愚痴ばかりになってしまう。(笑)
最初のNGOへ行くときの動機ですが、ぼくが欧米のNGOに行ったのは、単純に給料が高かったからです。そのときぼくは若くて、国連に入るか、国際NGOに入るか、待遇はぜったい民間の国際NGOのほうが大変よかったから、迷うことなくそちらにいった。ぼくはボランティア活動はやったことはない。すべてぼくがやることは、お金はちゃんといただくという前提でやって今までやってきた。ボランティ活動は、多分もうすこし裕福になって、何も他にすることがなくなったときに、ボランティア活動をじっくり60歳、70歳になったらやろうかと思っていますが。今の段階では自分でやったことは、しっかりお金をいただくという鉄則でやっていますので。べつに講演料の話ではではないですよ(笑)、これはボランティアでやります。 
だけど、ほとんどこの世界はそうです。やはり金がちゃんと出ないと駄目です。金をもらうということは、それだけの責任感もつ。ボランティアというのは大切なことですけれど、やはり甘えがありますよね。ぼくらがやることは正当な報酬をいただいて、それだけのことはかならず責任をもってお返しするということですね、ぼくは職能意識といいたいのですが、その世界です。ぼくが働いたのはプラン・インターナショナルという大手NGOの中でも大変にすばらしい世界一の団体だと思いますけれど、そこに職を得て10年間働きました。ちなみにプラン・インターナショナルは日本でFundraisingしております。日本フォスター協会といってフォスター・プランですね、ひとりの子どもを紹介するんです。別に子どもにチョコレートを与えるのではないのです。その子どもの家族とコミュニティを支援するのです。その特定の子どもの里親になっていただく、成長記録が届く。その子が皆さんのお金でできた学校へ通って、皆さんが建てた診療所でワクチンをうけて、どこのレベルにいっているか、それらの報告が逐一届くのです。アカウンタビリティというか、大変きめの細かい団体です。そこにぼくは職を得ました。以上です。

=質疑応答終了=

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